不登校についての基本的な考え方
~登校再開はそれほど難しくない~
*右の『参考資料』を確認しながらご覧下さい。
ここでは不登校に対する久徳クリニックでの基本的な考え方と治療成績についてお話します。更に詳しい説明については「専門外来→不登校」のページもご覧下さい。
不登校への対応方針は大きく二つに分けられます。一つは「不登校を容認して、登校刺激を与えずに様子を見る」というもので、もう一つは「積極的に治療して不登校を克服する」というものです。前者を「支持的(supportive)」な対応、後者を「指示的(directive)」な対応といいます。
久徳クリニックでは昭和54年の開院以来、不登校に対しては指示的な対応を行ってきました。
この対応は決して特別なものではありません。図1にもあるように不登校が問題化し始めた昭和50年代前半には、医療現場においても支持的対応と指示的対応の両者が行われていたのです。
図2は昭和50年代以降の文部科学省の不登校に対する取り組みをまとめたものです。児童心理を専門とする医師の間でも意見が分かれるという状況の中で、それなりの方向性を示さねばならなかった文部科学省の苦悩は察して余りありますが、平成4年に文部科学省は「支持的対応」を推奨する方針を提言しています。
この提言により、教育現場では、「登校刺激を与えない」、「行く気になるまで様子を見る」という支持的な対応が主流になりました。そしてこの対応姿勢は教育現場以外にも拡がってしまいました。
そして平成13年に、文部科学省による不登校の大規模な追跡調査が実施されました。
不登校のままで中学校を卒業した生徒が20歳になったときにどのような暮らしをしているのかを全国規模で調べたのですが、その結果は相当に深刻でした。
不登校のまま中学を卒業した生徒が20歳になった時点では「全体の6割がニートかフリーターで、そのうちの3分の1がひきこもり」という状況だったのです。
この結果に驚いた文部科学省は、平成15年に「不登校は様子を見ているだけでは改善しない」として「状況に合わせて登校を促すべきである」と平成4年の提言を撤回しています。
それでも不登校問題の改善は進みませんでした。
平成26年7月に文部科学省による10年ぶり2回目の追跡調査の結果が発表されました。
平成18年に中学校を不登校状態で卒業した子どもたちの20才時点(平成23年)での進路を調査したのですがその結果は次のようなものでした。
「中学校卒業後85%までの子どもたちが高校へ進学しているが、20才になった時点では、正社員9.3%、就学27.8%(短大・大学22.6%、専修・各種学校・フリースクール14.9%、定時制・通信制を含む高校9.2%)、就労と就学の重複19.6%、何もしていない18.1%、残りはパートかアルバイト(重複あり)」。
正社員率は22.3%から9.3%まで減少し、その分就学率が上昇しています。まとめてみれば「全体の5割弱がニートかフリーターで、そのうちの約3分の1がひきこもり」という状況でした。平成13年の調査とほとんど変わりがなかったのです。
以上が過去数十年来の我が国の不登校対策の流れといえます。
図3は久徳クリニックで用いていた不登校の分類です。私たちが治療の対象と考える不登校はこの図の③に該当する不登校です。各項目の詳細な解説はここでは割愛しますが、「学校に問題はない、学校には行きたいが行けない」というタイプの不登校が本来の不登校であり治療の対象になると考えています。
図4は③のタイプの不登校に対する久徳クリニックの考え方です。私たちは「本人を年齢相応に頼もしい状態に育て上げ、社会(=学校)の中に居場所を作る力を充実させること」が不登校治療のもっとも重要な目標であると考えています。
ですから久徳クリニックでは留年のリスクなどが無い限り、「登校させるための治療」は行いませんでした。それよりも本人の「たくましさ=社会の中に居場所を作る力」を伸ばすための治療を行います。
年齢相応のたくましさが充実すれば、連動して本人の「学校の中に居場所を作る力」も強くなっていきますから、登校刺激などは与えなくても自然に登校できるようになります。
この治療法を私たちは「生活療法」と呼んでいます。専門的には環境調整療法と認知行動療法を組み合わせた治療法になります。
この治療法は相当効果的に不登校を「治す」ことができます。ここでは平成20年に調査した治療成績を説明します。平成15年から18年までの3年間に久徳クリニックを受診された不登校の患者さん220名についての調査です。
図5は、患者さんが当院受診前に受けていた指導の内訳です。
指導内容の分類は、「登校刺激を与えない」「行く気になるまで様子を見る」などを「支持的」、「いやがっても頑張らせる」「手伝いなどをさせて日中暇にさせない」などを「指示的」、「精神科を受診するべき」「施設入所がよい」などを「他施設紹介」、「話を聞くのみで具体的な指導なし」を「指導なし」、それ以外を「その他」をとしています。相談先の内訳はグラフ下部に表示してあります。
平成15年に文部科学省は「登校刺激を与えず様子を見る」という提言を撤回して、「必要に応じて登校を促す」と指導方針を変更していますが、それにもかかわらず、「登校刺激を与えず、行く気になるまで様子を見る」という指導が圧倒的に多いことがわかります。
表1が治療成績です。
平成20年の調査では「総受診者数」は220名です。そしてそのうちの「治療継続例」は134名(60.9%)でした。治療中断例は86名ですが、この中には数回の通院で登校できるようになり通院を中止された患者さんも約半数含まれています。
通院継続麗134名のうちの26名の「その他」は、精神疾患などが見つかって転院された患者さんや、進路変更して登校することを取りやめた患者さんなどです。
134名からこの26名の患者さんを引いた残りの108名が「登校再開を目指して治療を行った患者さん」ということになります。
そして、その内の73名(67.6%)までが問題なく登校できるようになっており、登校再開できなかった例は3名(2.8%)に過ぎませんでした。登校再開までに要した日数は早くて1日、最長でも12週間でした。
以上の結果から久徳クリニックでは不登校について次の様に考えています。
①「不登校は必ず立ち直るから様子を見ていれば良い」という考えは明らかに間違っています。平成13年と20年の文部科学省の調査結果からも、フリースクールも含めて中学校を不登校状態のまま卒業した場合には、20歳時点での生活状態は、少なくとも半数程度まではニートかフリーターで、約2割がひきこもることがわかっています。
そして現在では「80/50問題」が深刻化しています。
②特に本人に「学校に行けるようになりたい」という希望がある場合にまで、「無理をすることはない」と休むことを勧めるのは、指導する側の「意見の押し付け」であり責任放棄ともいえます。その結果として改善の可能性がある不登校から改善の機会を奪ってしまうことにもなりかねません。 これは医療であれば明らかな誤診であり、訴訟の対象にもなりえますが、そこまでの意識が持たれていないままに指導が行われているのが現実のようです。
③目標を定めて治療を行った場合には登校再開はそれほど難しくありません。これも私たちが積極的に登校再開を目指す理由の一つです。 当院受診前には様子を見ていた患者さんであっても、方針を変更して登校再開を目指せば、遅くとも12週以内に約7割までの患者さんが登校再開できます。ここまで簡単に登校できるのであれば様子を見る必然性は全くありません。
④以上のような理由から私たちは「学校に行きたい」という希望があるのであれば登校再開に向けて挑戦する方が合理的であり現実的であると考えています。特に小中学生の不登校は義務教育終了までに解決を図るべきであると考えています。
ここでは不登校に対する久徳クリニックでの基本的な考え方と治療成績についてお話します。更に詳しい説明については「専門外来→不登校」のページもご覧下さい。
不登校への対応方針は大きく二つに分けられます。一つは「不登校を容認して、登校刺激を与えずに様子を見る」というもので、もう一つは「積極的に治療して不登校を克服する」というものです。前者を「支持的(supportive)」な対応、後者を「指示的(directive)」な対応といいます。
久徳クリニックでは昭和54年の開院以来、不登校に対しては指示的な対応を行ってきました。
この対応は決して特別なものではありません。図1にもあるように不登校が問題化し始めた昭和50年代前半には、医療現場においても支持的対応と指示的対応の両者が行われていたのです。
図2は昭和50年代以降の文部科学省の不登校に対する取り組みをまとめたものです。児童心理を専門とする医師の間でも意見が分かれるという状況の中で、それなりの方向性を示さねばならなかった文部科学省の苦悩は察して余りありますが、平成4年に文部科学省は「支持的対応」を推奨する方針を提言しています。
この提言により、教育現場では、「登校刺激を与えない」、「行く気になるまで様子を見る」という支持的な対応が主流になりました。そしてこの対応姿勢は教育現場以外にも拡がってしまいました。
そして平成13年に、文部科学省による不登校の大規模な追跡調査が実施されました。
不登校のままで中学校を卒業した生徒が20歳になったときにどのような暮らしをしているのかを全国規模で調べたのですが、その結果は相当に深刻でした。
不登校のまま中学を卒業した生徒が20歳になった時点では「全体の6割がニートかフリーターで、そのうちの3分の1がひきこもり」という状況だったのです。
この結果に驚いた文部科学省は、平成15年に「不登校は様子を見ているだけでは改善しない」として「状況に合わせて登校を促すべきである」と平成4年の提言を撤回しています。
それでも不登校問題の改善は進みませんでした。
平成26年7月に文部科学省による10年ぶり2回目の追跡調査の結果が発表されました。
平成18年に中学校を不登校状態で卒業した子どもたちの20才時点(平成23年)での進路を調査したのですがその結果は次のようなものでした。
「中学校卒業後85%までの子どもたちが高校へ進学しているが、20才になった時点では、正社員9.3%、就学27.8%(短大・大学22.6%、専修・各種学校・フリースクール14.9%、定時制・通信制を含む高校9.2%)、就労と就学の重複19.6%、何もしていない18.1%、残りはパートかアルバイト(重複あり)」。
正社員率は22.3%から9.3%まで減少し、その分就学率が上昇しています。まとめてみれば「全体の5割弱がニートかフリーターで、そのうちの約3分の1がひきこもり」という状況でした。平成13年の調査とほとんど変わりがなかったのです。
以上が過去数十年来の我が国の不登校対策の流れといえます。
図3は久徳クリニックで用いていた不登校の分類です。私たちが治療の対象と考える不登校はこの図の③に該当する不登校です。各項目の詳細な解説はここでは割愛しますが、「学校に問題はない、学校には行きたいが行けない」というタイプの不登校が本来の不登校であり治療の対象になると考えています。
図4は③のタイプの不登校に対する久徳クリニックの考え方です。私たちは「本人を年齢相応に頼もしい状態に育て上げ、社会(=学校)の中に居場所を作る力を充実させること」が不登校治療のもっとも重要な目標であると考えています。
ですから久徳クリニックでは留年のリスクなどが無い限り、「登校させるための治療」は行いませんでした。それよりも本人の「たくましさ=社会の中に居場所を作る力」を伸ばすための治療を行います。
年齢相応のたくましさが充実すれば、連動して本人の「学校の中に居場所を作る力」も強くなっていきますから、登校刺激などは与えなくても自然に登校できるようになります。
この治療法を私たちは「生活療法」と呼んでいます。専門的には環境調整療法と認知行動療法を組み合わせた治療法になります。
この治療法は相当効果的に不登校を「治す」ことができます。ここでは平成20年に調査した治療成績を説明します。平成15年から18年までの3年間に久徳クリニックを受診された不登校の患者さん220名についての調査です。
図5は、患者さんが当院受診前に受けていた指導の内訳です。
指導内容の分類は、「登校刺激を与えない」「行く気になるまで様子を見る」などを「支持的」、「いやがっても頑張らせる」「手伝いなどをさせて日中暇にさせない」などを「指示的」、「精神科を受診するべき」「施設入所がよい」などを「他施設紹介」、「話を聞くのみで具体的な指導なし」を「指導なし」、それ以外を「その他」をとしています。相談先の内訳はグラフ下部に表示してあります。
平成15年に文部科学省は「登校刺激を与えず様子を見る」という提言を撤回して、「必要に応じて登校を促す」と指導方針を変更していますが、それにもかかわらず、「登校刺激を与えず、行く気になるまで様子を見る」という指導が圧倒的に多いことがわかります。
表1が治療成績です。
平成20年の調査では「総受診者数」は220名です。そしてそのうちの「治療継続例」は134名(60.9%)でした。治療中断例は86名ですが、この中には数回の通院で登校できるようになり通院を中止された患者さんも約半数含まれています。
通院継続麗134名のうちの26名の「その他」は、精神疾患などが見つかって転院された患者さんや、進路変更して登校することを取りやめた患者さんなどです。
134名からこの26名の患者さんを引いた残りの108名が「登校再開を目指して治療を行った患者さん」ということになります。
そして、その内の73名(67.6%)までが問題なく登校できるようになっており、登校再開できなかった例は3名(2.8%)に過ぎませんでした。登校再開までに要した日数は早くて1日、最長でも12週間でした。
以上の結果から久徳クリニックでは不登校について次の様に考えています。
①「不登校は必ず立ち直るから様子を見ていれば良い」という考えは明らかに間違っています。平成13年と20年の文部科学省の調査結果からも、フリースクールも含めて中学校を不登校状態のまま卒業した場合には、20歳時点での生活状態は、少なくとも半数程度まではニートかフリーターで、約2割がひきこもることがわかっています。
そして現在では「80/50問題」が深刻化しています。
②特に本人に「学校に行けるようになりたい」という希望がある場合にまで、「無理をすることはない」と休むことを勧めるのは、指導する側の「意見の押し付け」であり責任放棄ともいえます。その結果として改善の可能性がある不登校から改善の機会を奪ってしまうことにもなりかねません。 これは医療であれば明らかな誤診であり、訴訟の対象にもなりえますが、そこまでの意識が持たれていないままに指導が行われているのが現実のようです。
③目標を定めて治療を行った場合には登校再開はそれほど難しくありません。これも私たちが積極的に登校再開を目指す理由の一つです。 当院受診前には様子を見ていた患者さんであっても、方針を変更して登校再開を目指せば、遅くとも12週以内に約7割までの患者さんが登校再開できます。ここまで簡単に登校できるのであれば様子を見る必然性は全くありません。
④以上のような理由から私たちは「学校に行きたい」という希望があるのであれば登校再開に向けて挑戦する方が合理的であり現実的であると考えています。特に小中学生の不登校は義務教育終了までに解決を図るべきであると考えています。
人間形成障害
この人間形成障害型の社会では、親がまったく普通の子育てをしているつもりであっても、子供たちに様々な問題が「予測もできない状況で自動的に」現れてくるようになります。
ぜんそくは自分で治せる
気管支ぜんそくの臨床は、いままでの『わからない・治らない』という時代から『原因を分析し実行すれば治る』時代に入ったのです...」。
ぜんそく根治療法
通院できない患者さんであっても、自宅で総合根本療法を実行して喘息を治していくことができるだけの知識を執筆されています。
ここまで治せる
不登校 ひきこもり
不登校をご家庭で「治す」ことも「予防する」ことも十分に可能です。不登校の解決は決して難しいものではないのです。