ぜんそくジャーナル
155号ジャーナル
心因はここまで喘息に関わります
喘息の発作のきっかけは大きく分けて4つに分類されます。心、体、アレルギー、感染の4つに分けられる(21号)のですが、今回は、この4つのうちの、心因についてのお話です。
体のコースにしろ、アレルギーにしろ、感染にしろ、すべてに共通しているのは、「過敏性」ということです。たとえば、台風の前に発作をおこす人がいるとしたら、その患者さんは、「台風に対して過敏なのだ」と考えればよいわけです。
心理的な発作は、心理的に敏感で、まわりにふりまわされやすい人におこりやすいと考えればよいのです。
これらの人には共通して「四悪」と言ってもよい性格傾向が認められます(127・128号)。
①あと向き発想で、何でも悪く考える性格。
②思いこんだら命がけで、言い出したらきかない性格。
③簡単なことをかえってむずかしく考える、こだわりやすい性格。
④たとえ自分が損をするとわかっていても、イヤなことはイヤですと、ゴネる性格。
これらの性格は、喘息を治すためには極めて不利な性格と考えておいて下さい。
心理的な要素のからんだ喘息では、この「四悪」を解決する努力が必要になりますが、この面の努力はなかなかむずかしいものでもあります。
体のたんれん、アレルギー対策等は、患者さんも納得して実行しやすいのですが、心のたんれんというものは、大人でしたら、性格とライフスタイルを調整しなくてはなりませんから、なかなか大変な、とっつきにくい作業となります。子供の喘息の場合は、要するに「しつけ」を調整しなくてはならなくなるわけですから、医者は、両親のしつけにまで口をはさまざるを得なくなります。たとえ治療とはいえ、しつけに口をはさまれることに抵抗を感じる親御さんも決して少なくはありません。
心理的な問題に口をはさまなくても解決する喘息ならよいのですが、そうでない場合には、医者もたとえ患者さんからけむたがれようとも責任上この話をさけてすますわけにはいきません。医者もツライところなのです。
それでも、心の問題について「なるほどそうか」と納得された患者さんでは、心の問題へのアプローチもスムーズにいく傾向はあります。
これらの例についての具体的な例をいくつか御紹介しましょう。
■バラ喘息
これは有名なエピソードです。 フランスのある婦人は、初めて発作をおこした時に部屋にバラの花がありました。バラの花が喘息の原因と思いこんでしまったその婦人は、その後バラの花を見るたびに発作をおこし、最後は、主治医が胸につけていた造花のバラを見ても発作をおこしたと言うのです。
これは典型的な「思いこみ」による、自己暗示性の喘息発作です。 これとよく似た例に、部屋の掃除をしていて、ホコリを意識しない内はなんともなかったのに、カーテンのすきまから差し込む日光の中に、ホコリがただよって浮いているのを見たとたんに発作が始まったなどという例もあります。
■ロングの実験
ロングという医師が、もう40年以上も前に報告している話です。 ハウスダストのアレルギーがあり、自宅でハウスダストを吸うと発作をおこす子供十数名について、ロングは、ある実験を試みました。
まず、子供たちを自宅から離して病院に入院させます。これは、ペシュキンが提唱している両親離断療法に相当します。そして、病棟内でイキイキとした生活をおくらせ(生活療法)発作がおきても安心という雰囲気も作り上げます。 ある程度発作が改善したところで、あらかじめ自宅からとりよせておいたハウスダスト、つまり、自宅では発作の原因になっていたハウスダストを、病室に扇風機で舞い立たせて、子供達に吸わせるのです。
十数人の子供の喘息患者に、この実験を行いましたが、そのうちの一人として、発作はおこさなかったのです。
心と体が前向きであれば、アレルギーもおさえてしまって発作も出ないという有名なエピソードです。