ぜんそくジャーナル

 

158号ジャーナル

ぜんそく治療Q&A / 蜂アレルギーの治療


Q:夏になって野山に出かけて遊ぶ事がふえ、種々な昆虫と接触する機会もあります。毎年夏にハチによる死亡事故の事が新聞に載り不安がありますが、どうしたらよいでしょう。

 
A:昆虫によるアレルギーはごく普通にみられ、代表的なものは、ダニアレルギーです。今回は、質問にある様に、時に死亡者まで出てしまっているハチアレルギーについて説明します。
ハチアレルギーは、経皮的にハチ毒を体内に刺入される事によって起こります。この場合の反応は局所の疼痛ですむ場合から全身性のアナフィラキシーショックを起こして時には死亡する事もあります。毎年日本では40名位がハチに刺されて亡くなっているといわれています。
人間に害をなすハチは多くいますが主にスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの3種類があります。
 
ハチ毒の成分は、ハチの種類によって少しづつ異なっていますが、各種のアミン、ペプチド、酵素を含む高分子蛋白からなっているといわれています。
ハチ刺傷の症状として、最も重大なものは全身性アナフィラキシーショックです。全身のジンマ疹、発赤、血管浮腫、上気道浮腫、気管支の狭窄、低血圧性ショックによる循環不全などの症状があらわれます。大部分は刺傷後15分以内に症状が出現し、症状の出現の早いほど、また高令者ほど重症化するといわれています。おもな死因は、気道の狭窄(喉頭浮腫と気管支の狭窄)と循環不全(低血圧性ショック)といわれています。
 
その他に局所の反応として、局所の反応として、局所の痛みを伴った発赤、腫脹がありますが、通常数時間で消失します。時に、刺傷部分から広範に腫脹が広がり、数日間続く事がありますが、この様な広範囲の局所反応が生じた者の中から、再度の刺傷によって全身性アナフィラキシーショックが生ずる者がいます。
ハチアレルギーの予防は何といっても刺されない事が大切で、ハチが越冬の準備を始める秋口には、ハチの攻撃性が高まっており特に危険です。
 
また、刺傷された時の応急処置としては、刺入部位よりも体に近い部位を圧迫帯で縛り、刺入部位の近くにエピネフリン(ボスミン)の0.2~0.3mlを注射する事により、ハチ毒の吸収をおくらせる事が出来ます。日本でも最近、携帯用のエピネフリンの自己注射セットの使用が認可されました。
また局所の反応に対しては、抗ヒスタミン剤やステロイドの外用薬を使用します。
 
全身性アナフィラキシーショックに対しては呼吸管理と循環管理が必要となりますので、アナフィラキシーショックの可能性がある場合(局所の疼痛、発赤、腫脹以外の何らかの全身性の症状がある場合)はただちに医療機関を受診するべきです。この場合も大事をとって自家用車で患者を運搬したり、自分で車を運転して受診するという事はさけて、救急車を依頼するべきでしょう。
 
ハチアレルギーの対策としては減感作療法が極めて有効です。これは阻止抗体(IgG抗体)を高める為にハチ毒を用いて行ないます。一九八五年に開かれたAmerican Academy of Allergy and Immunologyの昆虫部会において発表された指針では、「減感作療法を施行する対象は、16才以上で、全身反応の既往歴を有し、皮内反応、またはIgE抗体陽性者に行なう」とされています。一回の刺入により約50マイクログラムのハチ毒が刺入される事を参考にして、この約1%の0.5マイクログラムから週一回の割で漸増し、50~100マイクログラムを維持量として月一回注射するという方法です。維持量に達する期間は3~6ヶ月を目標にして慎重に行ない、維持量に対したら可及的に長く続ける事となっています。
久徳クリニックでは、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチの減感作療法を行っています。
 
通院の場合は、週一回の注射で、3~6ヶ月をかけて維持量まで増量します。
週一回の通院が難しい場合や、仕事の都合(林業など)で急いで維持量まで増量したい場合には、「急速減感作療法(RIT)」を行います。
急速減感作療法は、ショックなどの副作用に対応できるように入院して行います。一日に数回の注射を行い、約一週間で維持量まで増量し、退院後は月一回の注射を続けます。
 
また、蜂アレルギーの有無は簡単な血液検査でわかりますから、心配な方はまずは検査をお受けになることをお勧めします。