ぜんそくジャーナル
162号ジャーナル
なぜ少ないのか 喘息根治の専門医
はじめに
久徳クリニックでは気管支ぜんそくについて、その仕組みを説明し(総合医学説といいます)、患者さんごとに原因を分析し、すべての原因について根本療法を行なう、総合根本療法を行なっています。
そのため日本一国内だけでなく外国まで含めて遠方からも治療においでの方も珍しくありません。
そしてしばしば、「他にも久徳クリニックのような総合根本療法を行なっている医療機関はないか」という御質問やお問い合せをいただきます。
しかし、結論からいいますとこの総合根本療法を行なっているのはいまのところ久徳クリニックだけなのです。
■治せない専門医が日本の主流
なぜ日本でこの総合根本療法が拡がらないのか、その原因について説明しましょう。
日本でアレルギーの検査や治療がはじまったのは、ちょうど40年前のことです。この頃、ぜんそくは「分からない病気」「治らない病気」といわれていましたが、アレルギーの治療ができるようになったので、私を含め当時の約40名の専門医は「これでぜんそくは全治できる」と考えたものです。しかし、この専門医の中で私だけが、ぜんそくはアレルギーだけでなく、心、体のバランスなどいくつかの原因が重なっておこる病気だと考え37年前、ぜんそくの総合根本療法をつくり出し現状にいたっています。
ところが私以外の専門医は、ぜんそくは「アレルギーだけが唯一の原因だ」と考え、この40年来、ぜんそくに対してアレルギーの検査と治療を続けてきました。しかし、約10数年前から、「アレルギーの治療だけではぜんそくは根治させにくい」という話が専門医のあいだでささやかれるようになり、「やはりぜんそくは分からない病気だ」「治らない病気だ」と信じられることになってしまいました。そして、やむをえず、新しく開発されたステロイドホルモンの吸入薬を吸入するとか、テオフィリン系の薬を続けて内服し、せめて発作をおさえ続けるより仕方ないという「薬にたよる治療」が日本のぜんそく治療の主流になってしまいました。
■薬にたよる治療は誤り
ステロイドホルモンがわが国に入ってきた40数年前、発作をおさえる力が強い薬なので、「この薬さえあればぜんそくを全治させることができる」と当時の専門医は考えたものでした。しかし間もなく、「ステロイドは発作を楽にすることはできるが、使いすぎると死亡することもある」ということが分かり、ステロイドで全治させると考えるのは誤りだということになりました。そのステロイドを「吸入なら副作用が少ないから」とか「発作で苦しむよりは目先だけでも楽になればそれでよい」という考え方で数年前から盛んに使うようになったのです。
アトピー性皮膚炎では、ステロイドの内服はもちろん、ステロイド軟膏を皮膚に塗るのもなるべくさけるというのが常識になっているのに、ぜんそく治療の世界ではステロイドの吸入(ステロイドを気管支粘膜に塗ることになる)は害がないから積極的に行なうべきだというのが治療の主流になってしまったのです。この傾向はまだ数年のことですから、もしかすると数年ないし10数年のうちに、やはり誤った方法だったということになるかも知れません。
■ぜんそく根治の医学とは
ぜんそくの総合根本療法が開発され、全治させることもできるようになったというのに、それは氷山の一角にすぎなくて、数10年前も現在も「ぜんそくは分からない病気、治らない病気」という考え方が医学会の主流になっているのはなぜなのかということを知っていることが大切です。いま医学界の主流は薬か手術で病気を治す身体医学ですが、「ぜんそくを根治できる薬」はないのです。それを薬を使って治そうとするから全治させることができないのです。
人間形成医学は医者が治せないぜんそくが自然に全治することがあることに着目して、自然に治る仕組みを解明し、それをもとにして総合根本療法をつくり出すことに成功した医学で、その歴史はまだ40年足らずなのです。日本の大部分のぜんそく専門医は「薬だけに頼ってぜんそくを治そうとする」から、ぜんそくを根治させることがむずかしいのです。
久徳重盛