ぜんそくジャーナル

 

155号ジャーナル

インフルエンザについて

 

■インフルエンザにご用心

毎年冬になると、1~2月にかけてインフルエンザが流行します。毎年のことなので特に恐ろしい病気とは思われない面もありますが、今世紀初頭の「スペイン風邪」では全世界で2100万人が死亡し、わが国でも37万人が死亡しています。
さすがに最近ではそこまでの大事になることはありませんが、それでも今年の1月には全国で688人の患者さんがインフルエンザで死亡(そのうちの86%は65歳以上の高齢者)していますから、決して油断はできません。
特に喘息とか肺気腫などの慢性の呼吸器疾患をもつ患者さんでは注意が必要です。喘息では感染性の強い発作が引き起こされることがありますし、肺気腫では、感染により更に肺機能が低下して、もとに戻らなくなる恐れもあります。
 

■インフルエンザとは

インフルエンザはインフルエンザウィルスにより引き起こされます。インフルエンザウィルスにはA型とB型があり、大流行するのは主にA型ウィルスです。A型ウィルスにはスペイン型、アジア型、ソ連型などの種類があります。
症状は、突然に発症して(潜伏期は1~2日)、38度を越える発熱と上気道炎症状に倦怠感などの全身症状を伴います。肺炎などの二次感染を合併したり小児の場合は脳炎を併発すると生命に関わる事態も起こり得ます。治療薬としてはアマンタジンという薬がありますが、この薬もA型インフルエンザの感染初期にしか効果はありません。
 

■予防が大切

インフルエンザ対策として、現在最も効果があると見なされているのはワクチンによる予防です。流行が始まる前の11月ごろまでに2回接種します。間に合わない場合は1回の接種でも効果はあるといわれています。ワクチンには卵の成分が含まれていますから、卵アレルギーがある場合は射てません。
 

■ ワクチンの効果は?

以前は小児の定期接種としてインフルエンザワクチンの接種が行われていましたが、効果がないのでは?といわれて中止になってしまいました。
インフルエンザのワクチンの効果は、発症を完全に予防するもの、つまり「インフルエンザにかからなくする」ものではなかったので、そのような事になってしまったのですが、最近の研究からインフルエンザワクチンの効果がはっきりしてきました。
インフルエンザワクチンの主な効果は「重症化を予防する」効果です。いくつかのデータをご紹介しましょう。
札幌市における調査では平成6年から9年までの間に31名の幼児のインフルエンザ脳炎が発生し、そのうち16名が死亡、6名には後遺症が残り、9名が軽快していますが31名中29名はワクチンを接種しておらず、残りの2名は不明でした。
米国の老人ホームの10年にわたる調査では発病防止効果は30~40%、肺炎・入院防止効果は50~60%、死亡防止効果は80%とされています。
 

■ 日本でのワクチンの取り扱い

日本のインフルエンザワクチンの取り扱いは先進国の中では相当に遅れています。小児に対しては「有効性を検討するべきだ」という議論がされていますし、高齢者は現時点では「接種要注意者」とされています。
国際的にみても、インフルエンザワクチンの有効性は認められていますから、専門家の中には「いまだに有効性の議論をしているのは日本だけだ」と指摘する人もいます。
高齢者についても同様で、例えばフランスでのインフルエンザワクチンの接種率は、15~24才で5%に過ぎませんが、75才以上では69%であり、欧米では「高齢者こそ接種すべきだ」とされており、高齢者、慢性の心肺疾患を持つ人、老人ホームの入所者は接種の対象とされています。
 

■ ワクチン接種をお勧めします

幼児の脳炎の発生率は相当に低いので脳炎を恐れてワクチンを接種するのはやや杞憂に過ぎるのではないかを思われます。
喘息・肺気腫などの患者さんには、ワクチンの接種をお勧めします。
メーカーのワクチンの生産量に限りがありますので、ご希望の方は早めにお申し出下さい。
インフルエンザは受験シーズンに流行します。受験を控えた子供さんも念のために接種しておいては?と、個人的にはお勧めしています。 
  (重和)