ぜんそくジャーナル

 

111号ジャーナル

親と家庭の価値の崩壊                     


■家庭とはなに?
人間にとっての家庭とは、大家族があって、近所と仲良く付き合って、兄弟も4~5人おり、外に遊びに行けば友だちもたくさんおり、家族愛、近隣愛、夫婦愛、兄弟愛、友人愛を養いながら、「集団生活」をする集団生活環境のなかの、一家族であることが、「生物的にも生理的にも必要な条件」です。
 
■親と子が成熟する
虎や熊のように、いつも一人で生活している動物は、子供を産んだ時も、「親ひとりだけ」で子を育てます。これはなぜかというと、「育児本能が充実した状態」で子を産むからです。
不思議?なことに、人の親は「育児本能が未熟な状態」で子を産みます。
これは余り知られていない、非常に大切な事実です。
育児本能が未熟なまま、はじめて子を産んだ母親は、(1)近所に一杯いる育児のベテラン、大先輩といえる母親たちのまねをしたり、(2)教えてもらったり、手助けしてもらって、育児本能を充実しながら、子供を育て、親としても「成熟した親」に成長してゆくものです。
生まれた人間の子は決して親だけで育てるものではなく、近所の人とのかかわりの中で育ち、大きくなるに従って、近所の友だちも、わが子を育てる大切な役割を果たします。そしてお母さんが次々に4~5人の子を産むと、兄弟もお互いの交流の中で、お互いに「育て合う役割」を果たします。
「ひとりっ子」がうまく育たないのはこのためです。
 
■集団環境の崩壊
日本は、「大人が健全に生活し、子供が健全に成長、発達するために必要な集団生活」の環境がすっかりこわれてしまいました。
これがぜんそくやアトピーなど体質病や心身症、登校拒否、出社拒否、大人になっても働けない人たち人間形成病の現われる温床になっているのです。
 
■家庭の価値の崩壊
家庭は、人間の子が育ち、大人の生活の場として最も大切な場ですから、家庭の価値が崩壊することは、人間にとって致命傷ともいえる障害を与えます。
家庭の価値の崩壊現象はまず大人の世界に現われ、(1)近所付き合いが下手になり、(2)大家族生活の不能症、核家族の生活しかできない夫婦になり、ついで(3)夫婦間にもひびが入り、夫婦の対立、浮気、不倫、離婚などもふえてきます。
家庭、家族がイキイキ、明るく生活することの「不能症」になってしまいます。白けた家庭、生きる楽しみのない家庭で生きていると、人間は、無意識のうちに「生甲斐のない生活」「充実感のない生活」を送らざるをえなくなります。
自律神経とホルモンバランスがくずれ、「喘息を根治させにくい最大の原因」になります。
 
■子供と家庭
子供にとって、好ましい成長、発達、人間形成に最も大切なのは、親と、その親の生活の場である家庭です。
子供は、親も家庭もなんて明るく、イキイキして、いいものだろうと感じ、心の栄養としてたくましく育ちます。しかし文明国になると、「親も家庭もたのしいものではない、いいものではない」という家庭がふえてしまいます。
こんな子供たちは、「瞼の母親」「なつかしい我が家」という感性が全く分からないまま育たなければならなくなります。
このように育った子を「精神的孤児」といいます。愛すべき親や家庭のない中で生き、成長し、人間形成を遂げねばなりません。親と家庭の愛に飢えた子として育ちます。
 
■捨て犬症候群
こんな家庭で育った子は子供の捨て犬が、ちょっと親切にするとどこまでもついてくるのと同じように、ちょっと親切にすると、人なつっこく、親切な大人によってくるものなのです。
いま日本には、この捨て犬症候群の子供たちが激増しています。
「家庭も親もたのしくない」「うちより学校が好き、授業が終わってもうちに帰りたくない」「物心のついた頃から親はいいものと感じたことがない」「うちがいやだから家出したい、親を殺したいと思ったことがある」「親切に、やさしくしてくれる人が欲しい」
いまこんな子供たちが、日本にあふれているのです。
もし幼児期にこんな育てられ方をしたら、ちょっとやさしくする人について行ってしまいます。日本には簡単に誘拐されるような愛に飢えた子か一杯なのです。あなたのお子さん、あるいはお孫さんは大丈夫?