ぜんそくジャーナル

 

123号ジャーナル

なぜ日本は医学が進んだのに喘息が治せないのか
なぜ日本は医学が進むほど喘息の根治ができなくなったのか

 

■医学はすばらしく進歩した

みなさんの中には、ひょっとすると、日本ではここ30年来、極めて医学がすすんだのに、なぜ喘息だとか、スギ花粉症を含む鼻炎、あるいはアトピー性皮膚炎などの治療、とくに根治療法が進歩しないのだろうか不思議な現象に気付かれた方があるかも知れません。
今回はこの問題について考えてみることにしましょう。
ここ30年来の医学の進歩はまさに驚異的です。伝染病は少なくなり、小児の死亡率は極端にへり、大人の長寿化現象も現れ、身体医学の最先端では心臓や腎の移植、さらに最先端医療として心臓と肺と一緒に移植できる時代に進みつつあります。
喘息の根本療法についても、約30年間の総合根本療法の開拓によって、90%以上の患者さんが全治または全治に近い状態になることができる(参照:11号、12号、よく治る老人喘息37号、喘息征服宣言49号、喘息根治のための「根治療法ガイド」、70号、特集、乳幼児喘息に著効73号など)というのに、こと、喘息に関する限り、日本全般の実情は、根本療法が、全く昔のままのみじめな状態なのです。〔参照:ショツク、30年前と治療効果は同じ、会報48号。悲惨、日本の成人喘息治療(厚生省調査)会報96号〕
 

■なぜ医学がすすんだのに

ふつう医学がすすめば治療方法も進歩するものです。
たしかにニッポンのこの30年来の医学の進歩は目覚ましく医学的な治療も驚異的に進歩しました。
気管支喘息の根本療法も久徳クリニックでは90%以上根治にもち込む総合根本療法が完成され、さらに昨年から「喘息根治の第三の時代」、つまり天命を全うするまで再発させないためのアフターケアの指導と治療(参照:再発予防の喘息ドック、94号、再発予防外来スタート、会報97号)もできる時代になったのに、日本のアレルギー病の治療は「30年も昔のまま」、あるいは、30年も昔より返って混乱してしまった状態になってしまっているのです。日本全体のアトピー病の人びとだけでなく、医者も含めて、深く考える必要がある深刻な事態になってしまっているのです。
 

■アレルギー熱中の誇り

日本の喘息などアトピー性疾患に対する研究は、約30年前、「アレルギーについての研究」が大きなひとつの決行になってしまいました。今から考えるとこれが喘息などアトピー性疾患を返って「分からない」「治らない」という状態にしてしまった最大の原因なのです。
喘息や鼻炎などアトピー性疾患について「アレルギーの研究」を深くすればするほど、アトピーのことが分からなくなってしまう、治療方法も不完全になってしまうというのは実に変な話なのです。
この「変な話」の原因が分からないまま、これでもか、これでもかと「アレルギー研究」 にばかりのめりこんでしまうと、研究はすすんだのに、ますますアトピー性の病気は治しにくくなってしまいます。
 

■分からない、治らないのくり返し

その結果、今迄と同じように、喘息などアトピー疾患は分からない病気、治らない病気という、同じ歴史のくり返しになってしまうのです。
これが、アレルギー熱に日本中がかきまわされ、アレルギーに熱中しているのに、喘息も、アトピー性皮膚炎も、なかなか根治させてもらえない結果をもたらしているのです。
アレルギーの研究がすすむほど、なぜアトピーを治せなくなったのか、極端にいえば、日本中の、アトピーに関係のあるドクターや患者さんは、深く考えてみる必要があります。
そうしない限り、アトピーを根治させることなどできるはずがないのです。
喘息も鼻炎もアトピー性皮膚炎も、もともとアトピー性の疾患です。アトピーというのは「アレルギー以外のことも関係する変なアレルギー」という意味です。
ところが、日本で、喘息の研究がはじまった時、「アレルギーの研究」だけに熱中し、アレルギー以外のことも関係するアトピーのことは考えない方向に研究がすすんでしまったのです。
「アレルギーの研究をいくらしても、アトピーのことは分からない」
こんな簡単なことが、いまの日本では忘れられてしまっているのです。アレルギー、アレルギーと熱中しているあいだ、アトピー性疾患の解決はむずかしいのです。(ジャーナル121号も見て下さい)