ぜんそくジャーナル
131号ジャーナル
第一の医学、第二の医学、第三の医学/ 身体医学と心身医学
皆さんは、医学には三つの段階(レベル)があることをご存じですか?
医学には、まず、第一の時代の医学と言われる「身体医学」と第二の時代の医学と言われる「心身医学」があります。
身体医学とは、簡単に言ってしまえば「体そのものの病気を治療する医学」であり、薬や手術などで症状を取り去る医学のことを言います。
感染症とか、骨折、外傷、心臓の奇形、脳卒中、心筋梗塞、癌、腎炎などなど、さまぎまな「体の病気(身体疾患)」に対して有効な医学であり、人類の平均寿命が伸びたのも、身体医学の進歩のたまものといってよいでしょう。
しかしながら、「身体医学」にも限界があります。たとえばストレスなどの「心因」によって体に症状が現れる心身症に対しては、身体医学はほとんど無力です。せいぜい目先の症状を薬で抑える程度のことしかできません。
心身症の患者さんを、「症状と薬から解放してあげること」は「心が体に与える影響」を考慮しない身体では不可能なのです。
この身体医学の限界を受けて「心が体に与える影響」までを考慮し、身体症状の背景にあって、その原因になっている「心因」へ働きかける「心身相関の医学」が発達しました。これが、第二の時代の医学と言われる「心身医学」です。わが国では約40年前から本格的な研究が進められています。
■第三の医学-人間形成医学とは
たとえば登校拒否の子が、朝になると腹痛をおこして登校できない状態になったとします。
身体医学のレベルの治療では、お腹に異常があるのかないのかを検査して(大体の場合は異常は見つかりませんが)痛み止めの薬をだす程度の治療しかできません。少し気のきいた先生であれば、「心理的な腹痛かもしれないから」と、専門の心身医学の先生を紹介してくださることもあるでしょう。
心身医学のレベルの治療になれば、心理検査とかカウセリング、各種の心理療法などが行われます。
「学校へいくことがストレスになっていて、そのストレスにより腹痛が引き起こされているのです。おなかそのものの異常ではありません」と「心身相関」についても説明されます。
しかしながら、「なぜ、学校に行くことがストレスになるのか、腹痛の原因はストレスだとしても、どうして、そのような反応をおこす個性と体質ができてきたのか?」という問題は解決されていません。
この問題を解決するために開発された医学が、第三の時代の医学といわれる「人間形成医学」なのです。
この医学は、単なる心身相関という側面から人間を観察するだけでなく、「人間はどのように進化してきたのか、人間という動物の心身両面における生物学的特徴はなにか、人間の人格、性格、体質の形成には、育つ畑である社会の状態、地域・近隣の状態、家族関係、親子関係、養育歴などの文化がどのように影響しているのか」という「生物としての人間の健全性とはなにか」を考える医学なのです。実は、この医学こそが、喘息や登校拒否を「治す」ことができる医学なのです。
■身体医学、心身医学の限界
身体医学レベルでの喘息の治療は、薬を使って目先の発作を凌ぐ「対症療法」(121号)しかできません。患者さんを「薬と発作から解放してあげること=喘息を治すこと」は身体医学では不可能なのです。ですから、ジャーナルの96号にもあるように、全国32ケ所の呼吸器専門と言われている病院でも、20年以上治療している患者さんが全体の半数以上という結果になってしまうのです。
心身医学のレベルの治療になれば、身体医学よりは喘息の仕組みが理解できますが、それでもまだ、心理的要素以外の喘息の原因についての対策が不足しているため、十分な治療効果は上がっていないのが現状です。