ぜんそくジャーナル

 

131号ジャーナル

いろいろ思う事⑦   久徳重和                     

 

■ 上手な診察の受け方は?

久徳クリニックを受診される患者さんのほとんどの方は、クリニックにおいでになるまで何ヶ所かの病院にかかってみえます。今月号のQ&Aにあるように、対症
療法だけの治療を続けてみえた方がほとんどです。
そのためか、初めての診察の時には、治療方針の違いにとまどわれる方が多いようです。
 
総合根本療法の知識を身につけるためには、医者の話を聞くだけでも40時間ぐらいかかります。なるべく早く理解していただくためには、初診時の問診が終わり次第、五原則の話に入ってしまえばよいのですが、初めての診察でいきなり経過について根堀葉掘り尋ねられたあとに、すぐきま、訳の分からない?仕組みの話をされても、患者さんは混乱されてしまい、「鳩に豆鉄砲」状態になってしまわれることも多いのです。
 
そのため、私は最近では、初診時にはまず病歴を聴取し、基本方針だけをお話しして、必要なジャーナルをお渡しし、次回までに自宅でしっかりと読んできて頂くという方針にしています。五原則の説明は2回目以降の診察の中で、順次説明していこうという方針です。
 
そうでもしないと、患者さんに「しっかり説明を聞いていく事の必要性」がわかって頂きにくいのです。病気についての説明を医者からしっかりと納得ゆくまで聞くという習慣になっていない患者さんが多いようなのです。
最近、ああそうかと気づいたのですが、多分そういった患者さんは、クリニックにおいでになるまでは、対症療法だけの治療を続けてみえたのでしょう。

対症療法だけの治療であれば仕組みの話も原因の分析法もストレスの話もなにも知る必要はありませんから、お医者さんと患者さんの間の話は、ほとんどが症状の話と薬の話だけで終わってしまいます。
診察の時には、先生に対して「このように調子が良くない、このように苦しくなる・・・」
と症状についての話だけをしておけば、先生はうんうんと聞いてくれた上で「じゃあこの薬を飲んで下さい」とか、「入院しましょう」とか指示をしてくれるはずです。患者さんは、先生に「おまかせ」して言われたとおりにしていればよいのです。
 
初めてクリニックにおいでになって方針の違いにとまどわれる方は、この「症状の話しさえしておけば、あとは先生がなんとかしてくれる」というパターンになっているようです。
感染症とか外傷とか癌だとかの「体の病気」であれば、身体医学による治療ですから専門家である先生に「おまかせ」すればよいのですが、喘息は「おまかせ」ではなおせないのです。
喘息を根治させる医者の一番大切な仕事は薬を出すことではなく「治し方を教えてあげる」ことです。それを理解して身につけて、「自分の力で喘息を治していく」のは、患者さんの仕事なのです。
 

■ おまかせパックツアーと山登り

たとえば旅行について考えてみてください。添乗員さんが付き添ってくれる「おまかせパックツアー」であれば、旅行者は大した苦労もしないで旅を続けることができます。何か困り事がおきたり、どうすればよいか分からなくなってしまったときには「添乗員さ-ん」といっていればよいのです。添乗員さんはお客さんの話を聞いて、お客さんに指示をします。お客さんはその指示に従って動いているだけで、大した努力をしなくても旅が続けられるのです。
病気の治療も、身体医学レベルの病気でしたらこのパターンと同じ「おまかせパック治療」でよいのですが、喘息の治療はそうはいかないのです。
喘息根治をめざす治療は、ベテランのガイドを頼んで険しい山を登るようなものなのです。
 
ガイドさんは依頼を受けた時点での登山者の状態から、その人を山の頂上まで登らせるにはどうすればよいかを考えます。そして、登山者に対して足腰を鍛えるためのトレーニングを命じたり、耐寒訓練として冷水浴を命じるかもしれません。必要な登山道具を揃えさせて、すべてについての名前と使用法を勉強するようにも言うでしょう。
そしてガイドさんと登山者は2人一緒に山へ向かいます。
力を出して山を登るのは登山者自身です。ガイドさんはつかず離れず寄り添ってアドバイスし、登山者が自力ではどうしようもない状況になった時だけ最小限の手助けをします。こうして登山者はガイドさんに助けられながら山頂に着くのです。
喘息山の征服法を知っている医者と、患者さんの努力があって、はじめて喘息山が征服できるのです。