ぜんそくジャーナル

 

145号ジャーナル

日本の喘息治療   身体医学の時代は終わりました            

 

■身体医学の降伏宣言

ついに日本の身体医学は喘息に対しての「降伏宣言」をしてしまいました。
「現在の医学では喘息は治らない」とはっきりと宣言してしまったのです。
ジャーナルをお読みになっている方はすでにご存じのように、ヒポクラテスの時代以来、喘息は「分からない、治らない」と言われてきた歴史があります。ですから、今更同じことを言わなくてもいいと思われる方もおいでになると思いますが、実は今回の「宣言」は少しニュアンスが違うのです。
 

■ 身体医学のあやまち

ヒポクラテスの時代から喘息は「分からない、治らない」と言われ続けてきてはいましたが、それでも意欲的な科学者たちにより「何とか治せないか」と積極的な研究も進められて来たのです。(133~137号をご覧下さい)。身体医学レベルでも過去においては、ガンと喘息とどちらが先に克服できるかと真剣に考えられた時代もあったのです。
 
その後、ステロイド剤が登場して「これで喘息患者も救われる」と言われた時期もありました。日本では昭和30年頃からアレルギーの研究が小児科の花形部門になりました。抗アレルギー剤が開発され「喘息の抜本的な解決の時代きたる」と言われた時期もありました。数年前にはイギリスで「喘息の遺伝子が見つかった」などという報告もされています。身体医学もそれなりに頑張ってはいたのです。
しかしながら、身体医学はあまりにもアレルギーにのめり込みすぎました。
「小児喘息の80%までにダニのアレルギーかあるから、小児喘息の原因はアレルギーである。成人喘息ではアレルギーの陽性率は低いから原因は分からない」と言うまったく杜撰な前提のままに研究を続け、最後までその杜撰さに気がつかなかったのです。
 

■本当にあきらめてしまった

そして、昭和60年には「アレルギーの治療は小児喘息には効果がなかった」ことが立証され(121号)、平成2年には成人喘息の悲惨な治療状況か厚生省により発表されました(96号)。
これらの厳しい事実に直面して、身体医学は完全に途方にくれてしまいました(142号)。
そして、あっさりと白旗を掲げて「現在の医学では喘息は治らない」と降伏宣言をしてしまったのです。
たしかに「喘息は治らない」と言う言葉は、それまでもよく使われてはいました。しかしほとんどの場合は専門外の医者による、患者さんに対しての苦し紛れの発言であったのです。
 
しかし今回は違います。
身体医学は「本当」に喘息を治すことを「あきらめて」しまったのです。
そして早速「治療のガイドライン」を作成して、ステロイド吸入を基本とする「喘息と一生仲良く付き合う」ための治療基準を作成しました(今月号のQ&Aに掲載してあります)。
今後はこの治療方針が日本の身体医学による喘息治療のファーストチョイスになっていくはずです。
 

■ 総合根本療法では?

とはいうもののこの治療法も無条件に「悪い」と決めつけることはできません。問題点を整理してみましょう。
久徳クリニックで行なっている総合根本療法でも、ステロイドを一切使用しない訳ではありません。
総合根本療法でのステロイド離脱率は70~80%ですから、どうしても治らない喘息(70号)の重症例などでは、10年以上も前から内服よりは安全なステロイドの吸入を使用しています。
しかし、患者さんにとっては「諸刃の剣」であり、医者にとっては「最後の切り札」であるステロイドか治療のファーストチョイスになることはあり得ません。
 

■身体医学の時代は終わった

今回のガイドラインによる治療法も、基本的にはステロイド療法なのです。
要するに薬による対症療法にすぎないのですから、この治療法で喘息が「治せる」わけではないのですが、喘息を治すことをあきらめてしまった身体医学は、この方法をファーストチョイスにしてしまいました。
ここが身体医学の限界のようです。
長年、喘息を征服しょうと努力はしてきたものの、ついに力尽きてしまいました。ひとつの時代が終わったのです。