ぜんそくジャーナル
158号ジャーナル
【手記】息子の入院について~A君のお母さん
退院して、しばらくしてから、私の職場の前校長から質問を受けました。その先生は、定年退職後、児童相談所で、不登校児の家庭を定期的に訪問することもあるということで、私が、息子を久徳クリニックに入院させて、また学校に通えるようになったということを聞いて、参考にしたいので、ぜひおしえてくださいとのことでした。
まず、はじめに「Aさんは、環境を変えるだけで、子供の不登校がなおると考えていますか。」と聞かれたので、「はい、そうおもいます。」ときっぱりと即答したので、先生は、ちょっと驚いた様子で、「どうしてそうおもうのですか。」と聞きました。「クリニックの先生が、退院の時に、『この子は、薬も何も使わずに、生活環境を変えただけで学校に通えるようになったのだから、これで安心してしまうのではなく、この生活のリズムを家に帰ってからも続けることが大切であり、これからがはじまりだ。』と言われました。」とこたえました。それから、クリニックでは、どんな生活をしていたのか、どんな子供でも、入院すれば学校へ通えるようになるのか等、いろいろ質問されました。
入院中の生活については、規則正しく、けじめがあり、自分の仕事は、責任を持ってすること、集団で行動する時、自分勝手なことをしないことなどを身をもって体験しました。そして何より、その生活が、先生、看護婦さんをはじめとする病院スタッフの方々の専門的であたたかい指導のなかで営まれたたということ。その環境を家庭でつくるために親の役目がとても大切だということ。入院は、そのためのお手本を体験することだと答えました。
どんな子供でも入院すればよくなるかということについては、まちがっていたということに気づいて、やり直そうという気持ちがあれば必ず学校に通えるようになると思います。と答えました。
その先生は、久徳クリニックについて、誤解をしていたところがあったそうで、その原因は、クリニックを訪れたお母さんたちが、「久徳さんに行っても子供ではなく、母親がいけないと言われて、具体的にどうしたら学校に通えるようになるかをおしえてもらえない。」と言っているのを耳にしたからだそうです。
最後に、私が読んでとてもためになったと思う久徳先生の本は何ですか。と聞かれたので、「愛欠症候群」と「人間形成障害病」の2冊をあげました。私にとってこの2冊の本は、血の気がひいて、あぶら汗が出てきた本でした。数日後にその先生から電話があり、書店をまわったけれども見つからない、とのことでしたので、クリニックの受け付けで販売していますとお教えしました。
頭では理解しているつもりでも、私自身も生活習慣を矯正している最中で、なかなか思ったような生活ができていませんが、息子は少しずつ、心がやわらかくほぐれてきたようで、ずいぶんのびのびしてきたのがよくわかります。それに積極的になってきたように感じます。市の交通局のスタンプラリーに同級生六人で出かけて、おとなでもできるかどうかというくらい広い地域を時間内にまわってきたり、科学館に友だちと出かけたり、息子が中心になってやっているようです。
これもクリニックから小学校まで、交通機関を利用して通学した経験のたまものです。子育てに一生懸命になるのはいいけれど、その方向がまちがっていたら、子供にとってこれほどかわいそうなことはないし、もし幸運にも、自分の子育てがまちがっていると気づいたら、すぐに直そうという気持ちが何より大切だと思います。
私は親として、絶対安全で、ここにいればだいじょうぶだ、と子供が感じ、安心してくつろぐことができる場所をつくってやりたいと思っています。ゆったりとリラックスした心から、イキイキした子供が育っていくのではないかと思うからです。
子供は親を選んでうまれてくることがでないから、本当にかわいそうだと思うし、息子も、両親のそろった良い環境に生まれて、そこで育てられればどれだけ幸せだっただろうかとよく考えたけれど、せっかく私のところに生まれてきてくれたし、私にはもったいないくらいやさしくてきれいな心を持っている子なので、感謝しつつ、気を引き締めて生活していこうと思っています。
完全に治ったなどとは決して考えていません。骨が折れたとか、けがをしたのとちがって、薬をつけて治るものではないことは十分承知していますが、いつも自分を律していくことのむずかしさを感じています。
先生、これからも、どうぞよろしくおねがい申し上げします。