ぜんそくジャーナル
169号ジャーナル
ぜんそくまめ辞典 魚からハウスダスト抗原
■家屋塵抗原をつくる
昭和35年、喘息のアレルギー研究を始めた、当時名大小児料講師であった久徳は、ほこりの抗原性は、ほこりに含まれる物質が分解され、ポリペプチド、ポリサッカライドに変わることによって、抗原性のある物質になると考え、人工的にほこり抗原を作る実験を始めました。
この頃、久徳は奇妙なことに気付きました。
「けずり節」から抗原を作り、皮膚反応陽性の患者を調べたところ、皆、家屋塵の皮膚反応も陽性であり、けずり節は魚が原料であるのに、魚に対して陽性の患者が全くなかったのです。つまりその当時のけずり節は、魚ではなくほこりの抗原性を持っていたのです。
なぜだろうか?おそらくけずり節の材料保有中、カビかなにかがそこで増え、魚が分解され家屋塵の抗原性になるのだ。
そこで、魚を材料にして、そこにカビを入れ、孵卵器で魚のけずり粉を餌にして、カビを増殖する研究を始めました。この研究は、当時名大小児料アレルギー研究グループの前島副手(後、愛知医大小児料講師)が担当しました。
その結果、魚を餌にして、そこでカビを増殖させると、カビが魚蛋白を分解し、その分解産物がほこりと同じ抗原性を持つことを証明できました。
つまり、人工的に家屋塵の抗原性をつくることに成功し、ほこりの抗原性の謎の一部を証明することができました。
これは貴重な実験で、人工的に一定の効果のあるハウスダスト治療液を作ることもできるということで、製法特許をある製薬会社が取ったほどです。しかし掃除機のほこりから作った方が安いので、人工的な抗原液は今でもつくられていません。
ハウスダスト抗原は、謎の多い存在です。