ぜんそくジャーナル
170号ジャーナル
総合根本治療の進め方について 小児ぜんそく
総合根本療法とは
医学には身体医学、心身医学と人間形成医学の三つの医学があります。
詳しくは初診時にお渡ししたジャーナル70号をお読みいただくとして、ここでは、この三つの医学では、病気の考え方、とらえ方が大きく異なるということを理解してください。
小児喘息を身体医学の立場でとらえると、「アレルギーが原因であり、半数は成人喘息に移行する。カーペットをやめ毎日掃除をして、ペットも禁止。積極的に治すことは不可能なので、長く付き合う覚悟が必要です」という病気になります。
心身医学の立場からは、「心身症として治療するべき疾患」となり、自立訓練とか箱庭療法、バイオフィードバック療法などの「心身医学的治療」がおこなわれます。
これらの考え方からさらに一歩踏み込んで、「小児喘息の原因は単独ではなく、多因子性の疾患であり、しつけと育て方がかかわる生活習慣病ともいえる疾患」ととらえ、患者さんにかかわっている全ての要因に対して総合的に対応し、喘息を積極的に治していくことを目指した治療法が久徳クリニックの「総合根本療法」なのです。
この治療法は昭和35年頃に、久徳クリニック院長(当時は名大小児科)の久徳重盛により開発されたもので、喘息を根治させる治療法としては、最もすぐれたものと我々は考えています。
しかしながら、現在でも我が国では、小児喘息の治療は、アレルギーを中心とした身体医学によるものが主流であり、総合根本療法(又はそれに近いもの)を実施している医療機関は、全国で、3~4ケ所しかないのが実情です。
■治療のすすめ方の注意
総合根本療法を行うためには次のポイントを理解していただくことが必要になります。
①治療法の違いを理解したうえで、治療の目標を設定する。
総合根本療法の内容は大ざっぱに、(a)対症療法、(b)アレルギー対策、(c)生活療法の3つに分けられます。身体医学的な治療である(a)と(b)は、「根治のために努力せねばならぬこと」のせいぜい2~3割を占めるにすぎません。「毎日の生活、しつけ、親の接し方をどうすればよいのか」という、生活療法が、やらねばならぬことの7~8割に達します。
ですから、育て方についての生活指導が、最も大切だといえます。小児喘息は、医師の治療、指導と、家族(患者さん)の生活態度がうまく一致した時に、最も効率よく治ります。
以上の点を理解したうえで、治療の目標を設定します。
相当努力してでも根治させたいのか、今よりすこしでも軽くなればよいのか、対症療法で、目前の発作をおさえるだけでよいのか、などを整理する必要があります。日標によって、クリニックで受ける検査や治療、指導の内容が異なってきます。
②勉強第一
根治をめざすと決まつたら、まずは勉強第一です。
おぼえるべき項目は70号に載っている通りです。
初診後しばらくの間は、平日の午後4時までの時間帯に受診するよう心がけて下さい。 カセットテープを常にお持ちいただくと、詳しい説明の時に録音できますから便利です。毎回使うとは限りませんが、テープだけでけっこうですから、持参を心がけて下さい。
ジャーナル合本、書籍「ぜんそく根治療法」も教科書として利用して下さい。
③実行第二
いくら知識が身についても、子供さんの生活そのものが変わらなければ、効果は出ません。
まず、家族全員が、根治をめざして、足なみをそろえて下さい。診察時のテープも、家族全員が聴くように心がけて下さい。家族全員が治療の責任者であることを忘れてはいけません。
ぬかりなく手ぎわよく実行できれば、小児喘息は「朝日に消える朝霧のように」治っていくことも珍しくありません。
④経過のチェック
総合根本療法が、順調に実施できていれば、70号6頁にあるように、1年で80%、3年で90%までの患者さんはアフターケアに入れるはずです。
この状態にならない人は、どこかに見落としがあると考えねばなりません。
五原則にそった再チェックが必要になりますので、十分な指導をうけて下さい。