ぜんそくジャーナル
117号ジャーナル
アトピーの怪を追う
■アトピー?アトピー?アトピー?
喘息やアトピー性皮膚炎などアトピー性疾患は「アトピー」といわれる一方「アレルギー性疾患」ともいわれています。
このアトピーという意味とアレルギーという意味とには基本的な考え方の相違があるのです。
ところがこの30年来、「アレルギー」の研究が非常に進みました。医学の研究の花形といえるほどで、30年ほど前、研究をはじめた十数名の仲間のうち約半数が大学の教授になれたほどです。このことは以前にも本紙でふれたことがあります。そんなわけなので、アレルギーの検査や治療も広く一般に行なわれるようになり、アレルギーの特殊外来もつくられました。マスコミなども、喘息の原因はダニだ。アトピー性皮膚炎は、卵、牛乳、大豆のアレルギーだ、鼻炎はスギ花粉のアレルギーが犯人だとさわぎたて、医師会なども、アトピー性の病気はただアレルギーだけが原因だと錯覚するようなパンフレットをつくったりして「アレルギー」を強調しました。
つまり、アトピー性の病気であるのにかかわらず、この30年来「アレルギーだけが原因」と「原因は一つ」と考えるのが日本の流行になってしまったのです。
アトピーとは「アレルギーも関係することがある人間病」ということなのですが、アトピーから人間を切り離してしまって「アレルギー」のことだけしか考えないのが流行になってしまったのです。
■アトピー、アレルギーを笑う
アトピーとは「不思議なアレルギー」という意味です。
アトピーの歴史を考えてみることにしましょう。
1900年のはじめ頃、アレルギー反応が発見され、この抗原抗体反応をピルケーという人が「アレルギー」と命名しました。
それから約20年たった頃、アレルギー反応の結果現われるはずの疾患なのに、アレルギーによる抗原抗体反応では説明できない「アレルギー病」があることが分かってきました。
これが喘息やアトピー性皮膚炎、鼻炎やじんましんなどです。この病気に対して、コカという人が「不思議なアレルギー」という意味で「アトピー性疾患」と呼ぶことにしたのです。
喘息を例に考えてみても、(1)アレルギー性疾患のはずなのに、アレルギーか見つからない非アレルギー性喘息がある。(2)ほっとする、イライラする、親のしつけなど心が原因で発病したり、発作がおこる(会報82参照)。(3)春秋、台風など気圧、気温の変化で発病したり、発作がおこる。
とにかくアトピー性疾患はアレルギーだけでは理解することも根治させることも不可能な「不思議な病気」なのです。
そのアトピー性疾患を、この30年来、ただひたすらに、アレルギーだけで考え、治療するのが日本の流行になってしまって、アトピー性疾患の治療は、30年以上も昔から全く進歩しない結果となってしまいました。
アトピー性疾患が、アレルギーだけでなにがアトピーが治せるものかと、アレルギーを笑っているといってよいでしょう。
■アトピーの考え方の歴史
アトピー性疾患の代表といえる喘息について、病気の原因を昔からどう考えてきたか、その歴史について考えてみましょう。
二千年前、医学の祖といわれるヒポクラテスは、喘息は「心」の病気と考えました。それからずっと医学の暗黒時代が続いて近年になって、喘息は自律神経の病気という考え方の時代が続きました。内分泌の病気という考え方も現われました。
アトピー性疾患である喘息についての考え方にはこんなにいろいろあり、約90年前から次第にアレルギーということになり、30年前から、アトピーとアレルギーを区別しないくらい、ただひたすら、アレルギーだけがアトピー性疾患の唯一の原因と考えるのが流行のようになってしまったのです。
流行とは恐ろしいものです。
■アトピーとは何か
話が非常に複雑ですが結論からいいますと、アトピー性疾患は、むしろ自律神経失調病とか人間形成障害病で、心と体のバランスの乱れが基礎にあり、その患者さんの一部にアレルギーの関係する場合があり(この場合、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎などという)、非アレルギー性の喘息、鼻炎、アトピー性皮膚炎も結構多いということです。コカが、アトピーはすべてアレルギー病と考え、アトピーということばが用いられて来たのが基本的な誤りで医学的な混乱が続いているのです。