ぜんそくジャーナル
121号ジャーナル
喘息治療を始める前の基礎知識
喘息征服ジャーナルも創刊以来10年を経過しました。
一冊は、たかが8ページしかない小冊子ですが、いままでに発行されたものすべてをまとめれば、喘息征服のために必要な情報のすべてが網羅されていると言っても過言ではないほど内容は充実しています。
今回はすこし目先をかえて、本格的に喘息の治療を始める前に、患者さんが知っていたほうがよい基本事項についての説明です。すでに根本療法を実施してみえる患者さんも、もう一度再確認のつもりでお読み下さい。
気管支喘息の治療を始める前にまず必要な事は、喘息という病気とその治療法についての正しい知識を持つことです。喘息をごく簡単に説明すると「時々、咳が出たり、ゼイゼイ、ヒューヒューいったり、息が苦しくなったりすること」を喘息の発作と言います。そして体が「時々発作が起きる状態になっている」ことを喘息と言うのです。
息が苦しくなった時に「喘息がでた」楽になると「喘息が治った」と言われる患者さんもありますが、これは間違いであり、「発作が始まった」と言うのが医学的には正しい表現です。
発作は、何もしなくても自然に治まっていくこともあればいくら薬を飲んでも、吸入や点滴をしても治まらず、入院が必要になることもあります。
薬を飲んだり、吸入や点滴をして、「発作をしのぐ(乗り越える)」ことを目的にした治療を対症療法と言います。「症状(発作)に対しての治療」と言う意味です。発作があるときには適切な対症療法が必要不可欠ですが、対症療法には次のような限界があることも知っていて下さい。
1.もともと薬(内服、吸入、点滴)を使って「目先の発作をしのぐ、または予防する」ための治療法であり、「喘息を治す」ための治療方法ではない。そのため、いくらまじめに薬を飲みつづけても、根本的に喘息を治してしまわない限り、薬を減らしたり、中止したりするとまた発作がでてしまう。
2.薬さえのんでいれば発作が起こらないという患者さんは、ごく一部の軽症な患者さんだけであり、薬を正しく使っていても発作を押さえきれずに入退院の繰り返しばかりになってしまう患者さんも多い。
3.安全な、副作用の少ない薬だけでは発作が押さえきれず、内服や注射のステロイド剤が安易に使用され、その結果、体内の副腎の働きが低下してしまい、本来なら治せたはずの喘息が、不治の病になってしまうことも少なくない。(医原性の悪化)
残念なことに、現在の日本では、この対症療法を中心とした治療をする病院がほとんどであり、「喘息を治す」ための治療はまったくと言っていいほど行われていないのが実情です。そのために成人喘息では患者さんの半数以上が10年から20年以上という長期の闘病生活を余儀なくさせられており、〔平成2年の厚生省の調査〕、極端な場合には「喘息は治らない」と、まったく医学的には正しくない事を言われている患者さんも多いようです。(ジャーナルの96号を見て下さい。)
最近では、「喘息は慢性の気道炎症である」との考え方に基づき、ステロイドの吸入療法が始められています。今後はこの治療法が対症療法の主流になっていくと思われます。
このステロイド吸入療法であれば、副腎機能を抑制するほどの深刻な副作用はまず出現しないと思われますが、ステロイドを用いた対症療法であることには変わりはなく、根治を目指した治療にはなり得ません。
これらの対症療法に対して、「喘息を治す」ことを目的とした治療法もあります。久徳クリニックではその治療法を「総合根本療法」と呼んでいます。総合根本療法については、初診時にお渡しした「喘息征服ジャーナル」の70号に詳しく説明してありますから、これから総合根本療法を実行される方は70号を熟読して、その内容を理解して下さい。
「喘息征服の五原則」に従って総合根本療法を実行していけば喘息は「治すことができる」のです。そのためには、対症療法と総合根本療法の違いを正しく理解して上手に使い分けなくてはなりません。
目先の発作は、安全な対症療法でしのぎながら、同時に総合根本療法を実行していくのです。総合根本療法が充実していくにつれ、自然に発作はおこりにくくなります。自然に薬もやめていけれます。1年で80%、3年で90%までの患者さんが、ほとんど発作がないか、あってもごく軽い状態になります。その後、アフターケアをおこなって、再発させないめどを立てます。このとき初めて、「喘息が治った」といえるのです。